起業記

起業記 No.3 エンジョイ土木作業員♪

土木作業員としての仕事は、大阪厚生年金会館ホールの解体だった。

(現在はオリックス劇場と名を変えている。今でもこの近辺を通るときは感慨深いものがある。)

ホールの解体と言うからには、大きな建物をぶっ壊すのだ。

古い建物なので、思いっきり例のアスベストが使われている。

このアスベストを除去するのが、これからお世話になる親方のもとでの仕事だ。

 

土木作業員の朝は早い。

最寄り駅から、始発電車に乗って出発する。

親方の家に着いて作業服に着替えていると、仲間が12人と集まってくる。

みんな揃ったら出発だ。

チームメンバーは、中卒、小卒、元組員など、今まで触れてこなかった人種の人たちだ。

でもみんなめちゃくちゃ純粋で、目の前のことに一生懸命取り組んでいる。

学歴や、社歴は一切関係がない。

プライドなんかも全く以て使いものにならない。

ここでは、重いものが持てるかどうか、アスベストを力いっぱい削れるかどうかだ。

ちょっと前までは、大学院を卒業し、一流と言われる企業に勤めていた僕にはめちゃくちゃ新鮮だった。

いつ終わるかわからないプロジェクトや、何のためにやっているのか分からなくなってしまうような仕事、そんな状況の中、将来どうなるのか不安を抱えていた。

でも今は、目の前にあるこのデカイ建物をぶっ壊すという明確な目標がある。

さらに粉塵が舞う中でアスベストを確実に削り取るという超わかりやすい仕事だ。

僕にはこういうドンパチ系の仕事が合っていたのかもしれない。

 

さて、時間になったら、半ばブレーキが壊れているバンで出発する。

ブレーキが壊れていると言われると、いざ信号が赤になったときに前の車に追突しそうでめちゃめちゃ怖い。

出発するや否やコンビニに滑り込む。

各自、朝ごはんを買うのだ。

 

ちょっと衝撃だったのは、みんなお釣りを寄付していたことだ。

当時はまだ現金が主流で、買い物をすると小銭がお釣りで返ってくる。

見た感じだと、みんな50円未満は寄付していたように思える。

お釣りは受け取らずに「ここ入れておいてください」と、募金箱を指差してとっとと車に戻る。

僕も見習って端数は寄付するようにしてみた。

これまで自分がどう生きるか、どうやってお金を稼ぐか、あくまでも自分の間にベクトルが向いていたところ、ほんの少しでも顔を上げて自分や家族以外のためにお金を使ってなかったなって思った。

ちょっとしたことだが、僕の中では大きな変化だった。

今では、ほぼほぼキャッシュレス決済になり、小銭のお釣りを受け取ることもほぼなくなってはいるのだが、この端数は寄付をするという習慣は続けている。

で、話を戻す。

作業現場に着くと、全員集合して、ラジオ体操だ。

今までは、工事現場の横を通り過ぎるときに、作業員の人たちがラジオ体操をしているのを横目で見ていたが、まさか自分が当事者で思いっきりラジオ体操するとは思ってもみなかった。

やってみると、確かに体がほぐれる。

現場には、年齢が行ったおっちゃんらもいるので、朝一で体を動かしておくのは大事なことだ。

ラジオ体操が終わると1列になって前の人の肩を揉む。

すぐにチームメンバーと打ち解けて仲良くなっていた僕は、先輩から、

「思いっきり行くからな!」

と言われ、思いっきり肩をもまれてたりする。

前の人の肩を揉んだ後は、回れ右をして後ろの人の肩を揉む。

もちろん、

「思い切りいきますよ!」

と言って、思いっきりガシガシ肩を揉んであげる。

 

肩揉みが終わると、建設会社のプロジェクトリーダーから、本日の作業の確認が入る。

 

で、建物周辺の掃除だ。

放棄、ちりとり、ゴミ袋、各自適当に持って建物の周りに繰り出す。

隣に大きな公園もあるので、公園に入って落ち葉やゴミを拾う。

時間は10分程度と短いのだが、みんなで掃除すると結構な量のゴミになる。

公共の道路や、公園を掃除するってことは、普通に生活してたらなかなかないだろう。

先程の小銭の寄付の話ではないが、仕事中の話とは言え、掃除をして、心が少し洗われたような気になっている自分がいた。

よほど荒んでいたのだろう。

 

そんなこんなで、実際に仕事が始まるのは8時半くらいになる。

防護服に着替えて、粉塵用のマスクとメガネをして完全防備して現場に入る。

現場は完全に密封されていて、アスベストが外に飛び散らないように何重ものカバーがされていた。

解体の仕事は結構の重労働だ。アスベスト状況だけにではなく、ダクトをカットしたり、建築資材を壊したりもする。

8時から17時が勤務時間だった。

1時間作業したら休憩があるし、朝の掃除いや昼休憩もある。

休憩も30分ぐらいと長めだ。

なので、実働での作業時間は4時間から5時間くらいだった。

1日はあっという間に過ぎる。

 

うちの親方は気前がよくて、休憩時間ごとにドリンク代を出してくれた。

そんなものなのかなって思ってたが、他のチームは違ったのでうちの親方が気前が良かったんだろう。

しかも、なぜかみんなより休憩時間が10分長かった。

これも親方のおかげだったのだろう。

 

ここで、僕が非常に感銘を受けたのが休憩時間の各自の過ごし方だ。

どれも時間を無駄に使っている人なんかいないのだ。

みんな今この休憩時間という瞬間を一生懸命生きているのだ。

思いっきりスマホゲームをする人。

思いっきり爆睡する人。

思いっきり漫画を読む人。

(この現場は漫画を置いておくのはダメだったのだが、長机の下にゴルゴサーティーンが置いてあった。ある時、1周で入ってきた怖目のプロジェクトリーダーがゴルゴサーティーン発見発見して、誰が持ってきたんだと言いながら座って読み始めていたのが笑えた。もちろん僕も読んだ。)

なんか、将来がどうとか、未来はどうとか、理想やビジョンやらを考えていた自分が馬鹿らしくなった。

今この瞬間を一生懸命生きる。

これでいいんじゃないか。

むしろ、目の前のことに一生懸命取り組む事が、たとえスマホゲームや、爆睡であったとしてもかっこよく思えた。

知識だけあって、実践がついて行っていなかった僕にとって、今を一生懸命生きるというのは、非常に大きな気づきだった。

 

そんなこんなで、仕事が終わるとまたバンに乗って帰る。

帰り道にコンビニによって、それぞれアメリカンドックや、おやつを買い込んで車で食べながら帰る。

親方の家の下に到着すると、みんなタバコを1本吸って帰るという流れだった。

タバコを吸わない僕は、何故か倉庫に置いてあるベンチプレスで筋トレをして帰るというのが日課になっていた。

この、大きな建物をぶっ壊していくという仕事は、今振り返ってみても結構好きな仕事だった。

仲間たちとも気が合い、ストレスもなく、楽しい仕事の日々を過ごしていた。

 

もちろん心のどこかでは、このままではいけない。

いつか自分で、自分の仕事をするんだ。

という強い意志があった。

 

ただ、仕事を自分でやっていけるような気概もスキルも方法も持ち合わせていなかったのだ。

気持ちだけ先走り、悶々としつつも、仕事が楽しいという不思議な日々が続いたある日、転機が訪れる。

仕事帰りのルートで、大阪駅付近を歩いて帰っているときに、昔の知り合いにばったり出くわす。

せっかくなんでお茶でもということでノコノコ着いて行くと、

「ネットショップを立ち上げるので運営を手伝ってくれへん?」

と、完全に土木作業帰りの格好で、薄汚れた僕にオシャレなカフェでオファーしてくれた。

「いいっすね。やりましょう。」

インターネットがらみの仕事がやはり忘れられなかった僕は、そこで、解体作業員としての生活に終止符を打つことを決断した。

1週間後、僕はネットショップ運営の業務委託という形で参画することになった。

あくまでも僕は1個人として、組織に属することなく自分でやっていくのだという決意の表れでもあった。

しかし、そんなきれいごとでは世の中やっていくことができないということを再びまざまざと知る羽目になった。

さらに組織の後ろ盾も、会社の看板も何もない11個人がお金を稼ぐという事は、本当に大変なことなんだということを改めて身に刻むことになった。

ネットショップ運営×業務委託という自分が下した選択により、とんでもない働き方になってしまうのだが、この話は次回に回す。

 

ABOUT ME
佐藤 由典
合同会社マエストロ 社長 自由を求めて独立→真面目にビジネス取り組む→独立/奥さんにビジネス教えたら、勝手に会社員数か月分の利益を毎月出し続けてる ■実績:BUYMA利益150万円/月・楽天売上167万円/時・EC売上1,000万円/月・言えない案件利益300万円/月 現在は奥さんにネットビジネスをほぼまかせ、企業のITサポートをこなしながら、新たな事業にチャレンジ中。 平日15時以降は子どもたちと過ごす時間にしてます。
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